生玉社前ノ場
いくたましゃまえのば
生玉神社の境内。徳兵衛とお初が久しぶりに顔を合わせます。
徳兵衛は継母に渡していた持参金を、ようやく取り返したところでした。ところがその金を友人の九平次に貸してしまい、返ってきません。
それどころか九平次は「印判を偽造された」と徳兵衛に濡れ衣を着せ、大勢の前で打ちのめします。
人前で面目を潰される
徳兵衛がここで徹底的に追い詰められるからこそ、後の選択に説得力が生まれます。
令和八年 気良歌舞伎公演
そねざきしんじゅう
暗い客席でも読めるよう、画面は暗めにしてあります。まわりの方のご迷惑にならないよう、明るさを下げてご覧ください。
元禄16年(1703年)、大坂・曽根崎天神の森で実際に起きた心中事件を、近松門左衛門が一ヶ月足らずで芝居に仕立てました。
実際の事件をそのまま芝居にした最初期の作品で、当時大変な評判になったと伝わります。
醤油屋の手代・徳兵衛と、遊女・お初。二人が死を選ぶまでの一日を描きます。
醤油屋・平野屋の手代。実直だが人を疑うことを知らない
天満屋の遊女。徳兵衛と将来を誓い合っている
徳兵衛の友人。金を借りたまま返さず、逆に濡れ衣を着せる
いくたましゃまえのば
生玉神社の境内。徳兵衛とお初が久しぶりに顔を合わせます。
徳兵衛は継母に渡していた持参金を、ようやく取り返したところでした。ところがその金を友人の九平次に貸してしまい、返ってきません。
それどころか九平次は「印判を偽造された」と徳兵衛に濡れ衣を着せ、大勢の前で打ちのめします。
人前で面目を潰される
徳兵衛がここで徹底的に追い詰められるからこそ、後の選択に説得力が生まれます。
てんまやのば
お初のいる遊女屋。行き場を失った徳兵衛が忍んできます。
お初は徳兵衛を縁の下にかくまいます。そこへ九平次が現れ、徳兵衛の悪口を言い立てる。
お初は縁側に腰かけたまま、足を伸ばして縁の下の徳兵衛の喉に触れます。——死ぬ覚悟はあるか、と。
徳兵衛はその足を取り、自分の喉に押し当てて答えます。
この芝居の最大の山場です
二人は一言も言葉を交わしません。足の動きだけで生死を決める。歌舞伎でも屈指の名場面です。舞台の上だけでなく、縁の下もご覧ください。
てんじんのもりのば
曽根崎の森へ向かう二人の道行。
この世のなごり、夜もなごり。
死にに行く身をたとふれば、
あだしが原の道の霜。
一足づつに消えてゆく、
夢の夢こそあはれなれ
浄瑠璃の名文
意味を追うより、七五調の響きに身を任せてお聴きください。はがきに刷られていた一節も、ここから採っています。
役者が見得を切った瞬間、掛け声とともに舞台へ投げるのがおひねりです。小銭を紙に包んで作ります。
決まりのポーズで動きが止まった瞬間。周りが投げ始めてから合わせても構いません。
「待ってました!」「たっぷり!」など。恥ずかしければ拍手だけでも十分です。
どちらも必須ではありません。何もしなくても、観ていただくことがいちばんの応援です。