こんにちは、岐阜県郡上市明宝で活動している「気良歌舞伎(けらかぶき)」です。
令和7年9月の公演映像から、とある「愛されキャラ」をピックアップして現代語訳します!
その主役とは……小林朝比奈(こばやし あさひな)!
サムネイルのこの顔を見て、「なんだこのメイクは!?」と驚いた方も多いのではないでしょうか。
実はこの朝比奈、「見た目」と「喋り方」にとんでもない秘密(ギャップ)があるんです。 今回は動画を見るのが10倍楽しくなる、3つの豆知識をご紹介します。
① 顔がサルの理由「猿隈(さるぐま)」
朝比奈の顔にある、独特な赤い筋のメイク。 歌舞伎では「隈取(くまどり)」と言いますが、この朝比奈のメイクは特別に「猿隈(さるぐま)」と呼ばれています。

*忠雅による浮世絵「「隈取十八番 元祖中村伝九郎朝比奈梶原」」*
実はこれ、数ある隈取の中でも「最も古い隈取」と言われる歴史あるものなんです。
考案したのは、元禄3年(1690年)頃に朝比奈を演じた名優・初代 中村伝九郎。 彼は、額に横に3本の筋を引き、目の周りを紅で彩ることで、ユーモラスな「猿の顔」を表現しました。 (伝九郎の前名が「猿若」だったことに由来すると言われています)
まさかの「なすび眉」!?
そして、もう一度よ〜く顔を見てください。 眉毛の形、何かに似ていませんか?
実はこのハの字の眉、「なすび眉」と呼ばれていて、その名の通り「茄子(なすび)」の形に描かれているんです!
生白粉(なまじろい)の地に、猿のような赤い筋、そして眉毛はナス。 なぜナスなのか? その理由は、この後の「喋り方」の秘密で明らかになります。
② 言葉は「モサ」!?最強のギャップ萌え
そしてもう一つの特徴が、その喋り方。 動画の中で朝比奈は、こんな言葉を使っています。
「~だんべぇ」 「~だわさ」
これは歌舞伎で「モサ言葉」と呼ばれる、朝比奈特有の喋り方です。
そもそも「モサ」とは、語尾に「~だもさ」と付ける関東の方言(訛り)が由来。 それが変化して、動画のような「~だわさ」や「~だんべぇ」といった、独特の言葉遣いになりました。
実はすごい武将!でも言葉は「乳母」?
そもそも朝比奈は、歴史上では「朝比奈三郎義秀(あさひなさぶろうよしひで)」という、和田義盛の三男にあたる天下無双の猛将です。 (歌舞伎では鎌倉の地名をとって「小林」と呼ばれています)
本来、物語(曽我物語)の中では敵方の人物なのですが、歌舞伎の世界では「兄弟の味方」として描かれることが多い、ちょっと特別なポジション。
そこで初代・中村伝九郎は、この荒武者・朝比奈を演じるにあたり、なんと「乳母(うば)の常陸(ひたち)弁」を台詞に取り入れました。これが「モサ言葉」のルーツと言われています。
- 見た目: 敵も恐れる最強の武士
- 中身: 乳母のような包容力と優しさ
このギャップを演出するために、あえて田舎言葉のような「モサ言葉」が使われているのかもしれません。 「強そうだけど、気取らない愛されキャラ」。300年前から計算し尽くされたキャラクターなんですね。
③ 縁起が良い時しか言わない「なすび言葉」
そして極めつけは、動画に出てくるこの名台詞。
「ありがたなすびの初夢だわさ🍆」
そう、眉毛だけでなく、台詞にも「なすび」が入っているんです! 実は動画の中で、朝比奈は2回もナスのダジャレを言っています。
- 対面の許可をもらって感謝する時の「かたじけなすび🍆」
- 喧嘩を止めて感謝する時の「ありがたなすび🍆」
なぜナスなのか? それは「茄子(なす)」が「成す(成功する)」に通じる縁起物だからです。
朝比奈は、嬉しい時や感謝する時にしかこの言葉を使いません。 「ありがたくない(不満)」時には決して言わないのです。
顔(眉毛)にもナス、言葉にもナス。 全身で「おめでたいオーラ」を出しているからこそ、どんなに緊迫した場面でも、朝比奈が出てくれば「あ、この場は丸く収まる(成功する)んだな」という安心感が生まれるんですね。
意味がわかると、もっと面白い!
今回、この動画には「現代語訳テロップ」を付けました。
「猿隈」や「なすび眉」の表情の変化、「モサ言葉」の独特なリズム。 字幕で意味を追いながら見ると、役者(地元・明宝の演じ手です!)がこの歴史あるキャラクターをどう演じているか、その工夫が手にとるように分かると思います。
「顔はサル、眉はナス、喋りはモサ。でも仕事(仲裁)はきっちりこなす」
そんな朝比奈の魅力を、ぜひ動画で味わってください!
《寿曽我対面 現代語訳シリーズ(完結)》
- 【今回】小林朝比奈編(猿隈とモサ言葉の愛されキャラ)
2.工藤と兄弟編(父が討たれたあの日)
3.曽我五郎編(魂の咆哮!荒ぶるヒーロー!)
4.工藤と兄弟・完結編(決戦の地への招待状)
最後までお読みいただきありがとうございました!
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